楽器修理・リペアコラム

2019.12.19クラリネットの故障、修理と調整

はじめに

 

管楽器は、購入後にさまざまなトラブルが生じ、その都度修理や調整を必要とする製品です。演奏後に毎回ご自身で行うお手入れに加えて、知識豊富な技術者が常駐している管楽器専門店へ定期的にメンテナンスに出すことで、良い状態を長く保つことができます。


このブログ(コラム)では、楽器ごとにおこりやすい故障とその修理方法、またどうすればトラブルを避けられるかなどについて詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

 

管楽器のなかでも一番音域が広く、豊かな表現力が魅力のクラリネットは、吹奏楽のなかでもたくさんの人数を必要とされ、男女、年齢を問わず愛されている楽器です。


グラナディラという非常に硬い木材から作られている木製楽器であり、細かなパーツにも天然素材がたくさん使われているクラリネットならではの故障やトラブルについてお話していきたいと思います。

 

 

クラリネットの故障で最も多い「割れ」の原因と対処法

 

吹奏楽でもオーケストラでも存在感を放つクラリネットは、管楽器のなかでも特に修理・調整が必要とされる楽器ということもあり、当店でのお取り扱い件数も非常に多いです。なかでも修理する頻度が高いのが「管体のヒビ割れ」です。

 

 

「管体割れ」とは?割れるとどうなる?

クラリネットの「管体割れ」とは管体の木の部分にヒビが入る現象で、これは木製楽器特有の症状です。木目と区別がつかないくらいの小さな割れからトーンホール(音孔)までかかって管体を貫通する深刻なものまで、さまざまなケースがあります。

 

良く見ないとわからないような小さなヒビ程度でしたら、割れていても音は鳴ります。ですが、そのまま放置して吹き続けると例え表面だけのヒビでもどんどん奥まで広がっていってしまいます。


トーンホールにまで達して息が漏れるほどの割れになってしまうと、雑音が混ざり吹奏感が激しく低下します。

 

クラリネットが割れる原因

木製楽器であるクラリネットが割れる原因の多くは、急激な温度や湿度の変化によるものです。


例えば、外気も室温も低い冬、冷たくなったクラリネットをケースから取り出してすぐに演奏すると、36~37℃ほどある熱い水分を含んだ人間の息が管内に入ることで、内部が急激に温められます。


木には温められると膨らみ、冷えると縮むという特性があるため、急な温度上昇により管の内側から膨らもうとする力がはたらいて、その結果弾けるように割れてしまうのです。冬場に、管体割れの現象が多くみられるのは、このような理由からです。


また、木製楽器は乾燥にもとても弱く、夏の暑い時期にエアコンや扇風機が直接あたる場所に楽器を置くことで「割れ」を引き起こしてしまうこともあります。寒い季節ではないからと言って油断せずに、いつでも楽器にとって最適な環境を作ることを心がけましょう。


もちろん、落としたりぶつけたりしてヒビが入る場合もありますが、管体が割れるほとんどの原因は、このような温度変化や乾燥によるものです。

 

 

クラリネットの割れを防ぐための予防法

管体割れの原因となる急激な温度差を生まないためにも、寒い季節に演奏するときは、ある程度の時間管を軽くにぎったり、洋服の内側に入れたりして、できるだけクラリネットを温めて室温に慣らしてから吹くようにしましょう。


また、管内に水分が残ったままの状態だと湿度や温度の変化を受けやすいため、こまめに水分を取ることも大切です。


実は普段の私たちができることは、これくらいしかありませんが、基本的な対策を怠らないことで、割れる可能性を少しでも低くすることができると思います。

 

 

新品を購入した際に気をつけるべきこと

さらに、新品のクラリネットを購入した際にも気をつけていただきたいことがあります。

 


新しい楽器が手元に届くと、やはりみなさんうれしくていつまでも吹いていたくなりますよね。お気持ちはよくわかりますが、そこはぐっとガマンして、ゆっくり楽器を「慣らして」いきましょう。


制作の過程で長い乾燥期間を経てカラカラに乾燥している新品のクラリネットは、水分を取り込もうとする量が多く、かなり膨張しやすくなっています。そのため購入してすぐに長時間続けて吹いてしまうと一気に水分を吸収し膨張した結果、割れる原因にもなりやすいというわけです。


買ってすぐのクラリネットは、少なくとも1週間は1日15分程度で吹き終えるのが理想的です。その後も吹く時間を一気に増やさずに、様子を見ながら徐々に増やしていってください。すると吹きこんだ息の水分がゆっくりとおさまってきますので、これが馴染んだという目安になります。

 

 

クラリネットが割れた際の修理方法

割れの深さや長さにもよりますが、一般的には少しのヒビ割れであればクラリネットの素材であるグラナディラを粉末状にしたものと接着剤と混ぜ込んだものを流しこみ、割れた部分をふさぎます。


最後に、サンドペーパーやヤスリを使って磨きあげ、できるだけ傷が目立たず違和感がないように仕上げていきます。


一般のお客さまがご自宅で処置をすると、痕が残ったり本来の性能が戻らなかったりすることもありますので、ご自身で対処せずにかならず管楽器専門店にご相談ください。

 

 

修理費用

管体割れ修理 4000円~
*割れの長さや程度により異なります。お見積りは無料ですので、まずはご相談ください。

 

 

修理期間

当店でご購入いただいたお客さまでしたら、お預かりしてから2日後にはお返しすることが可能です。お急ぎの際は、その都度ご相談ください。一般のお客さまは、修理期間に1週間ほどいただいております。

 

 

 

 

クラリネットのコルクの劣化、その原因と対処法

 

クラリネットは、経年劣化により交換しなくてはならない部品がいくつかありますが、各パーツの接続部分についているジョイントコルクもそのうちのひとつです。

 


ジョイントコルクは消耗品ですので、使用するたびに摩耗し傷むことは避けられませんが、ちょっとしたお手入れの差でこの劣化スピードをおさえることができます。

 

 

 

ジョイントコルクが劣化するとどんな影響がある?

薄くてもろい材質であるコルクは、使用頻度とともに傷んでくるとカサカサになってはがれたり、めくれあがってきたりします。このような状態になるとジョイント部分がカタカタと動いたりゆるみが生じ、ぴったりとはまらなくなって、最悪の場合管が抜け落ちてしまうこともあります。


また、ジョイント部分のコルクがゆるむと、楽器自体が気密性を保つことができずに息漏れの原因となり、本来持つ美しい音色を奏でることができません。


演奏中に楽器がずれたり、隙間から唾液が漏れるというトラブルも考えられます。

 

 

ジョイントコルクが劣化するとどんな影響がある?

天然素材であるコルクが、時間の経過とともに劣化しくることはごく自然なことですが、実はこうしたコルクの劣化を早めている原因は「コルクグリス」の塗りすぎにある、ということは案外知られていません。

演奏前、クラリネットをスムーズに組み立てるためにジョイントコルクに塗る「コルクグリス」はコルクに浸透しすぎると、楽器本体とコルクを結び付けている接着剤を溶かしてしまうはたらきがあります。そのため拭き取らずに長時間グリスを塗ったままにしていると、普段より早いスピードでコルクがダメになってしまうのです。

 

 

コルクが劣化しないための予防法

まずはコルクグリスは余分に塗りすぎないように注意して、使用後はかならず拭き取ることを習慣づけましょう。


ベタベタしたグリスがついたままケースにしまうと、コルク部分に汚れやほこりがついたり、逆にケースにグリスがつき汚してしまうことにもつながります。

 

 

コルクが劣化した際の修理方法

まず、キイやレバーをすべて外して古いコルクを除去していきます。コルクが外れたら、楽器本体とコルクをつないでいた接着剤もきれいに取り除きます。小さな溝のすきままでキレイにしたら、新しいコルクを巻きつけ固定させます。

 

修理費用

ジョイントコルクの交換 2000円~

 

修理期間

当店でご購入いただいたお客さまでしたら、お預かりしてから2日後にはお返しすることが可能です。お急ぎの際は、その都度ご相談ください。一般のお客さまは、修理期間に1週間ほどいただいております。

 

 

 

 

クラリネットに虫が湧いてしまった!その原因と対処法

 

ジョイントコルクと同じく消耗部品であるクラリネットのタンポはフェルトでできています。使い続けると毛羽立ったり擦り切れてきたりして交換が必要になります。ところが使用頻度による劣化ではなく、衣類と同じように虫に食べられて交換せざるを得ないタンポもときどき見受けられます。

 

 

 

クラリネットに虫が湧く?タンポに虫が湧く原因

タンポの一部分が欠けていたり、真ん中がくり抜かれていたり、ところどころデコボコになっていたり…久しぶりに楽器を吹くために点検にもって来られたお客さまのクラリネットを分解するとタンポがこのような状況になっていることは珍しくありません。


これは、洋服の虫食いでもよく知られている「カツオブシムシ」という小さな虫のしわざです。ケースをあけたときに白い粉状が落ちていたら、カツオブシムシの食べカスである可能性が高いでしょう。


カツオブシムシは最終的にケースに住みついて卵を産むこともあり、新しくタンポを交換しても、またすぐに別の場所のタンポが被害にあう…という風に何度も同じことの繰り返しになってしまいます。


タンポは本来、楽器の穴(トーンホール)をふさいで音を出すためについています。場所にもよりますが、虫に食われて穴があいたタンポは息漏れがおこり、タンポ本来の「穴(トーンホール)をふさいで音を出す」という性能が発揮できなくなってしまいます。


長い間クローゼットにしまいこんでいる洋服が虫食いにあうのと同じように、長期間、楽器を吹かずにケース内にしまったままにしておくと、このような虫が発生してしまいます。以前、ご両親のどちらかが使っていた楽器をお子さまに譲るために久しぶりに出してみたら、タンポが虫食いにあっていたというケースもよくあります。

 

 

虫が湧かないための予防法

せっかく楽器を始めた方でも、受験勉強や進学、就職、結婚などライフスタイルの変化でしばらく楽器から遠ざかる時期もあると思います。


もしも吹かない時期が続いたら、定期的にケースをあけて風通しをし、日ごろ行うようなお手入れをしてあげてください。よく晴れた日に、ケースだけ天日干しをすることも効果的です。


愛着を持ってお手入れを続けていると、またいつか楽器を吹きたいと思ったときに少しでも良い状態でスタートすることができるのではないでしょうか。

 

 

修理方法

虫に食べられて穴があいてしまったタンポは、すべて新しいものに交換をします。当店では、傷んだタンポを交換するだけでなく、また同じ虫食い被害にあわないためにも天日干しや消臭スプレーなどを使ってケースのクリーニングも行い、完全に虫と卵を駆除していきます。

 

 

修理費用

タンポ交換(1個) 1700円~
*修理費用は、ダメージにより異なります。お見積もりは無料ですのでお気軽にお問い合わせください。

 

 

修理期間

当店でご購入いただいたお客さまでしたら、お預かりしてから2日後にはお返しすることが可能です。お急ぎの際は、その都度ご相談ください。一般のお客さまは、修理期間に1週間ほどいただいております。

 

 

 

クラリネットの扱い方・注意事項

 

衝撃や振動に弱いクラリネットは、組み立てるときや置き方にも細心の注意を払わなければすぐに不具合が出てきます。特にキイは意外と簡単に曲がってしまうので、ひとつひとつの動作を丁寧に優しく扱いましょう。

 

 

演奏の準備時

まずクラリネットを演奏する前に、それぞれのパーツの組み立てとリードのとりつけが必要です。楽器を取り扱うときは、キイに負担がかからないように注意してください。

 

 

本体の組みたて

1. 本体をケースから取りだし、接合部分に薄くコルクグリスを塗ります。


2. 上管とバレル、ベルと下管、上管と下管をそれぞれ順に組み立てます。上管と下管 をとりつけるときは左手でキイを押さえ、連絡キイの位置を縦に揃えましょう。

 

 

リードの取りつけ

1. マウスピースをバレルに差し込みます。


2. リードをマウスピースにあて、リードの位置がマウスピースよりもほんの少し(髪  の毛1本分程度)だけ下になるようにセットします。


3. マウスピースにリガチャー(リードとマウスピースをとりつける器具)をとりつけ ネジをしめます。※リガチャーの種類によりセットの仕方が異なります。

 

 

置き方

練習の合間にクラリネットを置くときは、キイやトーンホールになるべく負荷がかからないように少し傾けて置きましょう。


また、ベルの部分は広がった形をしているので、平らな場所に置くと転がってしまいます。ベルは机やイスなどから少しだけはみ出すようにして置くことで多少は安定感が増すでしょう。


部活やサークルなど大勢の人が集まる場所では、誰かが楽器に引っかかって落としてしまうリスクもあります。なるべく楽器から目を離さないようにして安定した場所に置くことを心がけましょう。クラリネット専用のスタンドもよく利用されています。

 

演奏後のメンテナンス

 

 

リードの水分除去

リガチャーをゆるめて、リードを外したらリードを傷つけないようにスワブ(紐がついたクロス)ではさんで優しく水分を拭き取ります。

 

 

マウスピースの水分除去

バレルからマウスピースを外し、ジョイントコルクの方から小さめのスワブを通して先端を傷つけないように水分や汚れを丁寧に取り除きます。

 

 

管内の水分除去 

管内の水分をそのまま放置しておくと膨張の原因となり、管体にひび割れが起こります。組み立てたときと逆の手順でクラリネットを分解したら、まず管内にスワブを通して溜まった水分を拭き取りましょう。


またジョイント部分の内側に残った水分やコルクグリスもガーゼなどで念入りに拭き取ります。

 

 

<スワブづまり>
上管の上の方には「音効管」という突起物がついていますが、これにスワブが引っかかって取れなくなるアクシデントがときどき起こります。無理に引き抜こうとすると逆に楽器を傷め、他の部分まで修理が必要になりますのでスワブが詰まったときは、お早めに管楽器専門店までお持ちください。

 

 

タンポの水分除去

トーンホールにクリーニングペーパーをはさみ、キイを動かして、一つひとつしっかりとタンポに残った水分を除去します。このときキイを押さえた状態でクリーニングペーパーを引っ張ると摩擦でタンポにダメージを与えてしまうので、ご注意ください。

 

 

楽器表面の汚れを拭き取る

キイに負担をかけないように、管体の表面についた指紋や手あかなどの汚れをクロスで優しく拭きとりましょう。

 

 

 

クラリネットの定期メンテナンスについて

 

湿度や温度の影響を受けやすい繊細なクラリネットは、日々のメンテナンスをきちんと行うことで、良い状態を長く保つことができます。


ですが、管内にたまった水分を取り除いたり、表面を磨いたりという基本的なお手入れをしっかりやっていただいたとしても、やはり楽器のコンディションは少しずつ変化していきます。

 

毎日お使いになっているご本人さまではなかなか気づきにくい点もたくさんありますので、ぜひ半年に一度は定期メンテナンスに出してみてください。部品の交換や全体のバランス調整を行うことで息の入り方や吹き心地が変わり、モチベーションも断然上がるはずです。

 

 

 

クラリネットの種類


クラリネットにはさまざまな種類があることをご存知でしょうか?同属の楽器を持つ管楽器は他にもありますが、なかでもクラリネットはたくさんの種類があります。

 

 

 

E♭クラリネット(エスクラリネット)

最も標準的なクラリネットである「B♭クラリネット」より4度高いミニサイズで、通称「エスクラ」。フルートと共通の音域をもつ。吹奏楽で活躍する曲は少ないが、ラヴェルの「ボレロ」では息の長いソロを担当。

 

 

 

B♭クラリネット(B管)

いわゆる「クラリネット」といえば一般的にこれを指すことが多いです。吹奏楽やオーケストラだけでなく、ジャズやポップスなどあらゆるジャンルでオールマイティに使われています。

 

 

 

Aクラリネット(A管)

見た目はほとんどB♭クラリネットと同じですが、B♭クラリネットよりも2度低く、やわらかく深みのある音が出ます。モーツァルトやブラームスの楽曲で使われていて、オーケストラの出番も多いです。

 

 

 

E♭アルトクラリネット(アルトクラ)

ソプラノクラリネット(B管、A管)とバスクラリネットの間の音域に位置する楽器です。中低音を充実させるために他の楽器とのユニゾンで使われることが多いです。

 

 

 

Fバセットホルン

「ホルン」という名前がついていますが、これもクラリネットの仲間です。見た目はアルトクラリネットに似ていますが、キーの数と調性が異なり、バセットホルンの方がやや低音。モーツァルトが好んで使い「レクイエム」など宗教音楽でよく用いられます。

 

 

 

B♭バスクラリネット(バスクラ)

つつみこむような低音が魅力で、全体の音を支える縁の下の力持ち的存在のバスクラリネット。重厚な音色を奏で、存在感のある楽器です。ハーモニーだけでなくソロでも活躍します。

 

 

 

E♭コントラアルトクラリネット

クラリネット属のなかで2番目に大きな楽器で、吹奏楽やアンサンブルで低音部を担当することが多いです。

 

 

 

B♭コントラバスクラリネット

持ち運ぶだけでも大変な、クラリネット属のなかで一番大きな楽器です。バスクラリネットより1オクターブ低く、クラリネット属のなかでは最も低い音域を持っています。

 

 

 

まとめ


吹奏楽だけでなく、クラシックでもジャズでもジャンルを問わず幅広く活躍するクラリネットの修理や故障、取り扱いについてご紹介していきました。


管体が天然木でできているクラリネットは、水分に弱く、特に急激な温度変化による「管体割れ」がもっとも多いトラブルです。


天然素材ゆえに、気候によって変化を生じやすいデリケートな楽器ですが、気温が低いときは温めたり水分をこまめに拭き取ったりして少しでもリスクを減らすことで、割れを防ぎ長く大事に使うことができます。


今回お伝えした管体割れやタンポの虫食い、スワブづまりなどのトラブルが起きましたら、ご自分で対処しようとせず、とにかく早急に修理に出してください。


早めに対応することで最小限の被害におさえられますし、みなさまの不安を少しでもとりのぞけるように、私たちも全力でサポートさせていただきます。

 text= グレイス楽器

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